戸田君、調子はいかがですか?(2/5)
 私は今回、戸田君とのことで移植のことを本にしたい、みんなに知ってもらいたいという気持ちがとても強くなりました。何故なら、あまりに移植のことを知らない方が多すぎるからです。
 ドナー登録を呼び掛けることによって返ってくる言葉は「休みがとれない!」というようなものが一番多く、反応として「でも、痛いんでしょう?」というのはまだ良い方でした。
 移植のことで、土佐に行くかもというと私の身内でさえ「令子、あなた、また骨髄あげるの」と言ったものがいます。こういうレベルです。念のため、女子医大の先生にチラッと話してみましたが「吉田さんとはあわないでしょう!」といわれました。カラダから血を流している人を目のあたりにしたら、普通、人はどういう行動をとるでしょう?自転車で転んで足を擦りむいたぐらいでは誰も気にとめてくれないかも知れない。でも、もう少し重症だったら……移植を待っている方っていうのは、少なくともそういう方だと思います。
 妹は再生不良性貧血で今日明日どうというカラダではありませんでした。特長としては血小板が極端に少ないのでおろし金で指を擦りむいた程度ならいつかは血が止まりますが、交通事故にあったりしたらとても助からないというようなものでした。
 彼女はおととし、移植し丸一年が経ちましたが移植する2年前に、出産をしてます。ヘモグロビンが2か3くらいしかない彼女がそうするというのは、命がけだったと思いますが、言い出したら聞かない性格なので、仕方がありません。妊娠中八カ月、出産後三カ月入院しました。話が随分と脱線しましたが、これをやりとげた妹を私は大変誇りに思っています。
 ドナー登録の件ですが「登録しようかな……」と答えが返ってくる方は、やはり、我が子をおなかを痛めて生んだ母親たちばかりでした。
 私も正直ユニフォーム姿の戸田君が息子とだぶりました。皆、他人事だと思っているけれど、いつ自分の身内が病気にかかってもおかしくないくらい水も良くない、空気も悪い、オゾン層は破壊されて、うすい毒ガス室の中にいるんだぞ!という生物学者の本を私は、学生の頃、もう何十年も前に読んでいます。私の赤ちゃんの時からつき合っている大親友は、10年前に代理母によりお子さんをアメリカで出産しています。彼女は子供が授かったことを感謝の気持ちで何か人の為にと思いすぐドナー登録したのですが十年以上、何も言ってこないということは、合う方がいないってことよねと先日も話していました。
 私の入院は四日間でした。腰に痛い痛い注射をすると思っている方、それはもう何年も昔の話です。実際20代で骨髄を提供したことがあるという友人は、腰にした麻酔の注射が一番痛かったと言っています。だからその程度ってことでしょ ?
 今は、何も知らないうちにあっという間に終わっちゃいます。人間80年いや90年生きるか分からないけれど、そのたった4、5日です。男の人って弱虫なんでしょうね?! 有給ぐらいあるでしょ? 俺の血は多分使えない!なんて言ってないで、試してごらんなさいと私は言いたい!!!
 移植したら、もしドナーの方がA型で戸田君がB型だったら戸田君はA型になってしまうということをご存じですか?又、性質も骨髄をくださった方に似てくるということがあるんだそうです。妹は変わりませんでしたが、、、ねんのため。
 最後に息子の話をします。息子は小6ですが、165cm 52kgあります。立派な体格でしょう?カラダの中身は全く子供なのに、カラダだけ大きくなってちょっと気の毒な感じすらします。彼の野球チームは、6年生が3人しかいません。3人目の6年生は5年生の時入ってきたので、チームはショートの子とピッチャーの息子とで引っぱってきました。春のリーグ戦はボロ負けでしたが一大奮起して猛練習したんでしょうね、秋には中野区で優勝したんです。私は寒〜い冬に手がかじかみながらも、夏のクソ暑〜 い時の過酷な練習もずっと見てきているので息子を可愛がって下さる近所のお兄さんのような気がしました。彼は主人が入っている近所の草野球チームにも参加させていただいたりしています。
 いつか、息子のチームと土佐高OBとで野球の試合をしませんか。今から彼に土佐高には絶対負けるなとしっかり話しておきます。野球の試合でもなんでも「ああ、もうだめだ」と思ったらそこで終わりですよね。今がとても苦しい時かも知れないけど、歯を食いしばってがんばってください。
 いつにも増してまとまらない文章でごめんなさい。いつも応援しているョ。
 がんばれ、戸田君っ!

         吉田(整膚師)